「ブラック企業の正社員」から「ホワイト企業の派遣社員」になった30代男性の幸せ

「ブラック企業の正社員」から「ホワイト企業の派遣社員」になった30代男性の幸せ
正社員から派遣社員になって幸せを実感した理由とは?(イメージ)
 正規/非正規格差という言葉もあるが、こと日本企業において、正社員であるということは、収入面での安定のみならず、社会的な信用も生まれやすい現実がある。だが、中にはせっかく憧れの正社員になったのに、その現状に失望し、自ら派遣社員への道を選んだ人もいる。
 都内在住のAさん(男性/36歳)は、都内の有名私立大学を卒業。リーマン・ショック直後の景気低迷の影響もあり、思うような企業に就職できずアルバイトを転々とした。その後、職場の人の縁でメーカーの営業職に正社員として就職することができた。
「バイト先の人の紹介から企業を紹介してもらい、面接後に機械メーカー代理店に正社員として内定が決まりました。当時、新卒で就職できないと『人生終わり』みたいな謎の風潮がありました。これでささやかだけど人並の生活を手に入れられると信じていました」(Bさん)
 だが、Aさんにとっては、それが地獄の始まりだった。代理店として複数のメーカーの製品を営業しなくてはならないので、まずは急いでその膨大な知識を詰め込まなければならなかった。さらには、24時間体制で機械の管理やトラブル対応を求められることも頻繁にあった。
「製品知識はなんとかして身につけましたが、取引先から深夜に呼び出されることが過酷でした。休日出勤も当たり前で、プライベートでも安心して過ごせる時間はほとんどない。こんなに頑張っているのに年収は300万円後半で、『なんでこんなブラック企業に入ってしまったんだろう』と人知れず涙を流したこともあります……。
 大手企業に行った友人は自分より楽な業務で倍以上の700万円はもらっていることも、理不尽に感じていました。それでも、世間体もあるので、今さら非正規社員に戻れない、と意地になっていました」(Aさん)
 そんなAさんは約5年間の“苦行”に耐えた後、退職して正社員のキャリアを捨てた。選んだのは、専門知識を生かした派遣社員だった。

「外資系企業の派遣社員になりました。完全在宅勤務になり、ほぼ毎日定時上がり。日勤だけでなく夜勤もありますが、もちろん時給は割増になります。残業は1分から出るすばらしさ。年収も大幅に上がりました。並行して、動画制作の趣味を生かしてフリーランスとしての活動も始めました。前の職場で経験した、『正社員なら組織のために滅私奉公すべし』というような、自分を犠牲にする精神はもうこりごりです」(Aさん)
 Aさんは実感を込めて、「ブラック企業の正社員より、ホワイト企業の派遣社員が圧倒的に幸せ」と語る。ひとくちに「正社員」といっても、その実態はさまざま、正社員にこだわるあまり、自分に合った働き方を見失う可能性もある。名ばかりの正社員に惑わされず、各個人に合った働き方を選択したい。